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思念を辿り、とあるアパートの前に来る。
運転手は事故に見せかけて殺したが、助手席のコイツは生かしておいた。
このように『贄』として残した連中が数多く存在する。
生前、魂を集めて負の塊にし、それを一気に解き放つ業を持っていた俺。
その業を死ぬ前に自らに『呪い』として施していた。
大変な作業だった。
俺は壊れていたから、マトモに動ける時間を殆ど取る事が出来なかったから。
正気に戻る一瞬に、順を追って施した呪…
完成するまで10年を費やした筈…
完成した途端に死ぬ事ができたのが一番の奇跡か。
いや、もしくは既に死ぬ筈だったのかも知れない。
俺の執念が奇跡的に延命をさせたのかも知れない。
兎に角、俺の呪は完成した。
そして、俺は奴に壊された場所に戻って来た。
因縁をより深め、怨みをより高める為に。
戻って来た場所は、馬鹿共が自らの命を差し出す場所と変わっていたのも幸運だった。
そしてその馬鹿の命を今宵貰う…
笑いながらドアノブを捻ると、ガチャガチャと途中でノブが回らない。
鍵を掛けているのか。
俺が現れるのだから当然か。
だが、鍵など無駄だ。
ドアから腕だけ通り抜けて鍵を外し、再びドアノブを捻る…
ガチャ
ほら…簡単に開いた…
鍵を外すのは、馬鹿により恐怖心を感じさせる為の演出…
本来ならば身体ごと通り抜ける事など簡単な事なのだ………
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