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痩せこけた男はゆっくりとゆっくりと、身体を揺らす事も無く近付いてくる。
柏木「うわ!!うわあああ!!」
バックギヤにシフトし、自らの意思でアクセルペダルを力いっぱい踏み込む。
一瞬で迫った後ろの壁。
ガン!!
激しく揺さぶられる身体。
作動するエアバック。
柏木「ぐああっ!!」
シートベルトをしていた為車外に投げ出される事は無かったが、柏木は自らの意思でシートベルトを外して外へ出た。
柏木「出た!出た!出たあ~!!」
後部が潰れた車をほっといて、走って逃げた。
足がもつれ、坂道を転げ落ちるよう、身体が回転する。
柏木「うわああああああああ!!」
途中のガードレールに衝突し、漸く止まった。
柏木「ゴフッ!!ガブッ!!」
激しく痛む腹部を押さえ、息を整える。
パッ
身体が照らされた。
車のライト。
誰かが肝試しか何かで来たんだな。
そう思い、助けて貰おうと立ち上がる。
ライトの方向を見ると
柏木「上からあ!?」
誰かが来たのなら、当然下から照らされる事になる。
上の廃墟には自分以外に誰も居なかった。
じゃああれは…
柏木「おれのくるまだ!!ヘプチッ!!」
自分の車でガードレールに突っ込まれた柏木…
血の味が口の中に充満する…
虚ろな目を車に向けると
先程の痩せこけた男が助手席に乗ってケタケタ笑っていた………
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