あの時の二人

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溜め息をついて早く時間が経過するのを待つ。 その時、パーティー会場の空気が一気に緊張した。 ざわめきすら掻き消えて静寂が支配するパーティー会場… リリム「御母様?」 会場に御母様が現れたのだ。 漆黒のドレスを身に纏い、威風堂々と上座に座る私に向かって歩いてくる。 御母様の美しさに思わず溜め息をつく者 御母様の冷たい眼差しに思わず身震いする者 御母様の存在感に思わず後退りする者… あらゆる人達を寄せ付けず、御母様は遂に上座に到着し、私に優しく微笑んだ。 釣られて笑う私。 そして御母様は会場の人達にお辞儀をしてみせる。 リリス「この度は私の娘のリリムの誕生パーティーにお越し頂き、ありがとうございます。しかし娘は緊張からか、些か疲れている様子…大事を取らせて退場させて戴く事をお許し下さい。」 頭を上げると私の手を取り、立ち上がらせる。 「リ、リリス…お祝いにお越し下さった財政界の方々のお顔もある…勝手な振る舞いは…」 リリス「勝手とは?娘の身を案じるのは母として当然の事では無いのか?貴方がお越し願った来客。後は貴方が責任を以てもてなせば良い。」 リリムの使命は果たした。と、冷たい眼差しを以て御父様を見る御母様。 御父様はそれ以上何も言わずに、黙って立ち去る私達を見送っていた。
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