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「あー…暑い…」 あれから十年。 「暑いか?」 こいつはずっと俺のそばに居続けている。 「暑いさ…お前は感じないだろうけど。」 グロームの紫水だと名乗ったこいつは精神世界の住人だから、現実の気候なんかは無視できるという。 羨ましい限りだ。 「感じないことぐらい分かってるだろうが。」 つんつんはねている髪の色は紫。もちろん常人などではない。 「分かっててもだなぁ……あ!」 「あ?」 「友達に本借りてたんだった…ちょっと返しに行きたいな…。暑いし、パパっと…」 ちらりと横目で見ると、紫水は渋い顔をした。 「俺の能力をそんなことで使うんじゃない。」 「えー…」 「えー…、じゃない。」 「咲蓮の家に行きたいって言ってるのに?」 「か、咲蓮の家…?」 「そ。臼杵咲蓮の家!」 ポリポリと頭をかく紫水。 かかったな、と内心でほくそ笑む。 「あー…まぁ…今日は、暑いしなぁ…」 「お前がいかないってなると、ちょっと遠いし…やめとこうか。」 「俺はいかないとは一言も言っていないぞ。」 「じゃあよろしく♪」 「…まったく世話の焼ける…」 と言いつつ、顔がにやけている。 説得力ないなぁ。 「いくぞ、桐晶。」
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