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「グロームは一言でいえば幽霊…いや、精霊のような存在である。現実世界とリンクしている精神世界の住人であるといわれているが、その肉体構成については未だ解明されていない。…グロームってどんな姿してるんだろうね、鱗ちゃん。」 臼杵咲蓮は中学2年生。幼くして原因不明の爆発事故で父をなくした。 本を読みながら父が生前飼っていた魚、鱗に呟く。 「お父さんの書いた本はやっぱりおもしろいよ…」 水槽の中の黄色が揺らめく。 「グローム、か…」 普通人には見えずに、しかし今どこかには存在するのだろう人のような精神世界の住人。 物思いにふけっていた咲蓮は、玄関のチャイムに飛び上がった。 「は、はい!今いきます!!」 玄関の扉を開けるとそこには同級生の根室桐晶がいた。 「咲蓮、おはよう。」 「おはよう桐晶くん。なにか用かな?」 「うん、これありがとう。」 桐晶が取り出したのはこの間貸した本だった。 「あぁー、本ね。…どう致しまして!」 咲蓮はにこっと笑った。
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