第一章

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ここは、ある住宅街の一つの家。時間的には夕方だ。青かった空は山の奥深くからオレンジ色の光が抜け出して、街全体を照らし出していた。 この家の玄関とは逆側の壁の2階の窓には、少し変わったものが置いてある。 ヘビの入ったガラスケースだ。 この家の主人は何という趣味だろうと、近所の連中は言っている。が、当の本人は全く気にすることもなく、堂々と、しかも、隠そうともしなかった。 中に住んでいるヘビはMATSUO.jrという。身体の色は赤とオレンジの入り混じっていて、黄の線模様もまだらに入っている。彼は、もう、6才近くになっていた。そろそろ子供も終わりの時期だ。MATSUO.jrは、じっと外を見つめながら考え事をしていた。 「全く、情けないなぁ。自分の事を、何も分からないだなんて」 そう、MATSUO.jrは、自分はどこから来たのか、どこで産まれたのか、親の顔も知らない。確かに分かっていることと言えば、自分は産まれる時からここ(ガラスケース)にいなかった、ということだった。 幼いころからずっと暮らしてきたおかげで、友達も顔見知りも沢山出来た。特に仲が良いのは…UMEchanだ。裏の家の庭に木が植えられていて、その木によく留まりに来るのだ。変に思うかもしれないが、話す相手もろくにいない中、ガラスを挟んで食物連鎖の関係が、おかしくなってしまったようだ。
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