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「どうして?返せる自信ないのに?」
「返せないからこそよ…プロポーズに応えるってだけでも羽山様の想いの半分は返せると思うわ」
「なんで?」
「少なくとも私はそうだもの。私が言うのもあれだけど、恵太さんって私のことすごく好きでいてくれるでしょ?」
「うん、ゆかりさんに対しては見たことないくらいゲロ甘だよね」
「だから私も恵美さんと同じ理由で返事に悩んだわ。…でも誰にも相談出来なかったから直接本人に言ったのよ。そしたら恵太さんに『じゃぁ、俺に全部返せたって思えるまで一緒に居てくれ』って言われたの」
「ごり押しだね」
「フフフ…でしょ?だけど、そう言われて結婚しようって思ったわ。好きな人に何も返してあげられないのに、その人はそんな私でも良いって言ってくれてるのよ?考えることなんてないじゃない」
「……うん、そうだよね…」
「あ、でもこれはあくまで、私の考えよ?恵美さんには恵美さんの考え方、捉え方があるでしょうから『絶対結婚しなさい!』なんて無責任な事は言わないわ」
「…うん」
「そうだぞ、ドブス。お前とゆかりでは脳ミソの出来が違ぇんだから難しいこと考えんなよ。ゆかり、茶」
ピンクのマグカップをゆかりさんの前に置きながら言うお兄ちゃん
マグカップ、色ちがいなんだね
「何となく納得したら帰れ。さっきから家の前にオッサンが車で乗り付けてんだよ」
「あらあら、羽山様は心配性ね」
別に迎えに来なくても歩いて10分で帰れるのに…
「ごめんね。じゃぁお邪魔しました」
「おいブス、お兄様から1つ助言だが、取り合えず結婚してみてイヤなら別れればいいんだよ。あんまり難しく考えんな、お前馬鹿だから」
「だってさ、ゆかりさん。イヤになったらいつでも別れればいいんだからね?」
「このドブス!お前に言ってんだよ!さっさと帰れ!」
「恵太さんうるさい!あの子が起きちゃうでしょ!」
「怒られてやんのー!お兄ちゃんざまぁ!…フゥ、じゃぁ帰るね、おやすみなさい」
わーわー言うお兄ちゃんをスルーして玄関を出たら、目の前には見慣れた幸人さんの車
回り込んで助手席の窓をノックして車に乗り込んだ
「なに話してたんだ?」
「聞かなくても分かるでしょー?」
「……で、返事は?」
「クリスマスまでじっくり考えさせてください」
「怖いなそれ」
アクセルを踏んでゆっくりと車を走らせながら、彼は困ったように笑った
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