第1章

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カチャン… 深夜2時。 家族が寝静まった夜、私は籠から抜け出す。 2階の自分の部屋の窓から静かに飛び出す。 親に見つからないように。 毎日毎日。 家の目の前に広がる海に、なにをするわけでもなくただ飛び出す。 『…さむっ…』 春先の夜の海は寒くて ブルッと身震いがした。 この海、昼間は真っ青で綺麗なんだよね… 『だけど、夜はおばけみたい…』 真っ黒で海鳴りだけが頭を貫くように響く。 私は砂浜に横になって空を見ていた。 『…スピカ…レグルス…』 ここは、星が綺麗に見える。 『夜空は冬の方が綺麗だ。』 ふぅ… 目を閉じて海鳴りを静かに聞いていた。 ゴォー… ゴォー… 「あ、あのっ!!」 突然、頭上から声がして びっくりして起き上がろうとした。 ガツッ!! 『…いったぁ。』 「…いってぇ。」 痛みが走ったおでこを抑え、そっと目を開けた。 したら、同じようにおでこを抑えた男のかたがいた。 『…あの…』 「あっ…。大丈夫ですか?」 思い出したように私に話しかけた。 『…はあ。』 「いや、あのっ、べっ…別に怪しいやつじゃないですよ!!ただ、こんな時間に海辺で倒れてたから…」 わたわたしながら私に必死に説明していた。 『ふふっ…』 その姿はあまりにも無邪気で、一瞬で緊張の糸がほぐれた。 「なんで笑うんですかぁ!!」 『あはは。ごめんなさい?心配してくださってありがとう。』 海風に当たって崩れた髪を耳にかけながら言った。
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