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「……っ、ふ」
何とか一と総司を撒いて、たどり着いた先は……、京の町並み特有の裏路地。
そこで嗚咽を堪えて、静かに泪を流した。
どうして、
どうして、
どうして……っ!
誰が私に罪を着せた?
何の為に?
「ねえ、君。 そこで何してるのさ」
「………っ」
誰でも良いから、縋り付きたかった。
悲しすぎる事実から、ただただ逃げ出したくて。
この人が誰だかなんて……、気にならなかった。
「君、名前は?」
飄々(ヒョウヒョウ)とした態度に、妖しげな微笑。
艶やかな黒髪が彼の第一印象だった。
そう。
私の拾い主、吉田稔磨の。
「私は………」
そこまで言って、口を閉ざす。
私の名前は遥。
だけど、それはさっきまでの私。
壬生浪士組に捨てられた私に、名前なんてものは………、無い。
「僕がつけてあげる。 雪、ね」
「――雪、」
私には、到底似合わない名前。
この紅い髪と同じように、この手を真っ紅に染めてきた私には。
紅い髪は気味が悪くてずっと、私は疎まれていた。
だけどそんな時、彼らは救ってくれた。
だけどまた、私は捨てられた。
もう、駄目だ。
どうしようもない屑だ、私は。
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