1人が本棚に入れています
本棚に追加
次の日から、心を入れ替えた昇馬によるライジングサンの調教が始まった。
コクオウ号で負けたことにより、ただでさえ少なかった昇馬の騎乗機会はより少なくなった。
しかし、その分ライジングサンの調教が出来るので、昇馬は全く気にしていなかった。
ひたむきに調教を続ける昇馬。
その様子を見守っていた辻と中岡も思わず目を細めた。
(昇馬のやつ、わかってくれたんだな…)
中岡は昇馬の変化が我が子の事の様に嬉しかった。
そして、何より驚くのはライジングサンの調教タイムだ。
以前とは比べものにならない。
折り合いがついた時のこの馬の力はこれほどのものか…。
(これならもしかしたら…)
辻の中で期待は高まっていった。
そして時間は流れ、ついにレース当日。
「お前…その頭は、どうした?」
レース前、昇馬の髪を見た辻は驚きの声を上げた。
競馬学校卒業後に生意気に伸ばしていた茶髪を、バッサリ切った坊主頭になっていたからだ。
「先生、俺は今日ライジングサンで負けたら騎手を引退します」
「え…?」
「俺とサンは一心同体なんです。サンは今日負けたら引退。俺も同じ気持ちです。俺達は崖っぷちコンビです」
「昇馬…」
昇馬の熱い決意に、辻は思わず言葉を失った。
最初のコメントを投稿しよう!