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「ちくしょう!また勝てなかったっ!!」
ガツン!と音をたて、昇馬(しょうま)はヘルメットを床に叩きつけた。
小岩井(こいわい)昇馬はデビューから二年経つがいまだに一勝も出来ない競馬騎手だ。
自分の腕は確かなのに勝てない…それは良い馬に乗れないからだ。
同期が次々と勝っているのもたまたま良い馬が回ってきたもの。
トップジョッキーと呼ばれる騎手も良い馬に乗っているから勝っているだけだ…と。
自分も良い馬にさえ乗れれば勝てるのに…完全に思い上がりなのだが昇馬は本気でそう思っていた。
この日もいつものように勝てず、休憩所でふて腐れていると…
「よう、昇馬。相変わらず腐ってるな」
昇馬が所属している厩舎の辻(つじ)調教師が話しかけてきた。
「先生…ほっておいて下さいよ」
ぷいとそっぽを向いて昇馬は適当な返事をする。
「まあ、そう言うな…そうだ」
辻はふいに思い付いたような声をだし、
「お前、金の卵を調教してみないか?」
「金の卵?なんすか、それ」
「うん…」
疑わしい目で見る昇馬に辻は深刻そうな顔で答えた。
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