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相変わらず勝てないでいる昇馬に吉報が届いたのは突然のことだった。
昇馬が休憩所で休んでいると、
「よう、昇馬。…いつもながら不景気な顔してるな」
辻が話しかけてきた。
「先生…ほっといて下さいよ」
ぷいとそっぽを向く昇馬に、
「…そうだ」
辻はいきなり真面目な顔つきで話しを切り出す。
「お前、コクオウに乗ってみるか?」
「コクオウ?…あっ!」
コクオウ号と言えば、次走の500万下のレースで単勝1倍台の勝利確実とみられている馬ではないか!そういえば辻の管理馬だった。
昇馬は思い出し、
「乗るっ!…いや、乗らせて下さいっ!!」
思わず身を乗り出して叫ぶように答えた。
「…いいだろう。ちょうど主戦騎手が負傷で休んでいるからな。お前に任せるよ」
辻はそう言って軽く手を振りながら去っていった。
「やった…俺にもついにチャンスが…!」
昇馬は身震いを抑えつつ初勝利に思いを馳せる。
良い馬だ…良い馬にさえ乗れれば俺は勝てるんだ!
昇馬の中でまた思い上がりの虫が湧き出していた…。
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