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そして、ついにその日がやってきた。
未勝利騎手…小岩井昇馬の初勝利記念日だ。
昇馬はレース日の朝、
「おはよう、昇馬」
厩務員の『源さん』こと中岡源三(なかおか げんぞう)に声を掛けられた。
「お前、今日は念願の初勝利だな!俺の定年前に見られて嬉しいよ!」
中岡はシワだらけの顔をさらにシワだらけにして笑う。
昇馬も笑いながら自信満々に答える。
「源さん、任せて下さいよ!俺は必ず勝ちますよ。なんせ今までの駄馬とは違いますからね」
「駄馬ってお前…」
その馬の中には中岡担当の馬もいるのだが…舞い上がっている昇馬は気付かない。
「…まあ、いいか。なんでも良いけど下手な騎乗して負けたら馬主やお客さんに迷惑かけるからな。気をつけて乗れよ」
「わかってますよ。俺が良い馬に乗ったら負けるわけないですよ」
「……」
ハァ…中岡は深い溜め息をついた。
この思い上がりが悪い方にでなければ良いが…。
この中岡の悪い予感はレースで現実のものになってしまうのだった…。
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