新しい生活

8/10

1834人が本棚に入れています
本棚に追加
/627ページ
会社をでて、来たときとは違う私鉄の駅に向かった。この駅からだと直通で一本でいけるらしい。 電車の中で、経理の田口さんが話をしだした。 「本部長が珍しくすごく気に入ったのよ。井上さん。若いし可愛らしいし、物静かなのね。連絡がとれないときは、まだかまだかって大変だったわ。空港に必ず迎えにだとか、寮に案内だとか、すごく気を使ってるみたいよ」 …ごめんなさい。あたし、物静かじゃない。 田口さんは率直に話をするけど、嫌味っぽくはないし、口調も柔らかい。 優しいお母さん。そんな感じ。 「でもね、ほんというと、私達もラッキーよ!だって定時前に堂々と帰れちゃうんですもの。井上さんのおかげね」 上品な口調なのに、お茶目なことを… そして、私鉄はなぜか途中から乗ったままJR線に変わり、千葉県に入った。 「次ですよ」 「あ、はい」 駅を降りると静かな町。 私は、前に一度だけ行ったあきちゃんの会社の寮を思い浮かべていた。 一棟まるごと寮で、たくさん会社の人がいる。女子寮だし、二人で1部屋って話しだった。
/627ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1834人が本棚に入れています
本棚に追加