引き金

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少し口をつけたと思ったら… 「あ?なんだこれ。なんで生ビールじゃないんだ?こんなの飲めっかよ!」 次の瞬間― 中身の入ったビールの缶を私に投げつけてきた 避けられず、頭にあたる。床にはビールがこぼれて。 「あ~ぁ、こぼれちゃっただろ。テメー、なんでちゃんと受け止めねーんだよ。もったいねー。わざとぶつかりやがって」 何をいっても、 どうやっても、 逃れたくても、 無理なんだとわかった。 ビールに濡れた髪と服。 私は黙って、床をふいた。 恭ちゃんはフラフラと立ち上がって… 私の手を踏みつけた。 踵でぐりぐりと… 涙が、床に落ちた。 もうしないって、言ったのに… 痛さと哀しさと、 悔しさと絶望と、 恐怖と逃避心が、 私を襲う。 私は… 黙って、踏まれている手の甲をみつめてた。 折れたらどうしよう。 右手なのに。 痛いよ、痛いよ、 誰か助けて… 声にはならなかった。
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