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放課後。
俺は、美術室へと足を運ぶ。
理由は、可愛い恋人に会うため。
―‥ガラッ
「やーす、―‥っ、」
勢い良く扉を開け、名前を呼んだ。
そして、俺は息を飲む。
黒板に向かい、真剣な表情で絵を描いているヤス。
その姿が、あまりにも綺麗で。
その絵を描き終えるまで、声は掛けまい。
そう、思った。
『‥ふぅ。‥あ、おーくら!いたなら声掛けてぇや!』
5分ほどして、コトン、とチョークを置いたヤス。
俺を一目見るなり、いつもの笑顔になった。
「ごめんごめん(笑)邪魔しちゃ悪いなって思って」
『おーくらって、変なとこで遠慮するやんな』
「そんな事は無いって(笑)」
ヤスの傍に行き、近くにあった机に腰掛ける。
「‥いつ見てもヤスの描く絵はすごいわ~‥。でも、なんで黒板に描くん?」
『んー?やって、儚いやん。黒板は、すぐ消せるから』
「‥、?でも、絵って残しとくもんちゃうの?」
ヤスの理解不能な言葉に首を傾げつつ、疑問をぶつけると
『確かにそうやけど‥。‥ほら、』
「あ‥っ」
黒板消しを手に持ち、絵の一部を消してしまった。
『僕は、二度と同じ絵は描けない。だから、この絵はもう見れない。見たくても。‥儚いやん?‥この、儚さがええの』
「―‥っ」
見たこともない表情で話すヤス。
そう言えば、ヤスの芸術論を訊くのは初めてかもしれへん。
『後世に残る芸術も、残らない芸術も。両方ええと思うねん』
ぽつりと呟き、微笑んだヤス。
その姿が、とても艶かしくて。
『ん‥っ!』
思わず、キスしてもうた。
学校でキスはせぇへんって二人で決めたんやけどな?
『おーくら、学校でキスはあかんってぇ‥//』
「‥ごめん(笑)ほんなら‥俺んち来る?」
『―‥っ////』
((これが俺らのスクールライフ!))
‥なぁ、ヤス。俺らの未来は
(んぅ?なーに?)
ちゃんとキャンバスに描いてな?
(‥当たり前やん。勿論、やで//)
END.
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