-プロローグ-

3/5
20人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
 俺は一体どこから来て、どこに向かっているのだろうか。  立ち尽くす。そりゃそうだ、どっちから来たのかもどっちへ行けばいいのかも、ここにいる理由もすべてが分からない。  夢か。いいや、”冷たい”。  はあ、と息を手に吹きかけてみる。かじかんでいてよく分からなかったが、確かに感覚はあった。 このまま行くと、末端から凍傷になる。悪化すると指が無くなるかもしれない。 しないよりはマシか、としばらく息を吐き付けてから、ズボンのポケットに突っ込んだ。  ふと、足元を見る。影はうっすらと、小さく落ちていた。自分以外の唯一を見やる。太陽は頭上で力なく輝いていた。 はて、あんなに小さかったろうか。  そういえば誰かから教えてもらった。夕日と昼間の太陽の大きさの違いは、比較物があるかないかで変わってしまうの目の錯覚だと。  誰に教えてもらったんだったか、慣れ親しんだ声だった気がする。あれは夕日が、そうだ、教室で。  一歩踏み出す。寒さで体が縮こまるが、元々酷い猫背だ。  方角なんて分かりはしない。当てもない。と、言うより目印も何も無い。果たして歩く意味はあるのだろうか。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!