昨日の砦と、君。

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抱きしめてあげたい。 そう思ったと知ったら、彼は動揺するだろうか? 思いながら、繋いだ手に空いた手を重ねた。 それだけで胸がはちきれそうなほどドキドキが増す。 いまのあたしの精一杯。 ことばの代わり。 大好きの代わりの手だ。 「エミリーってよくわかんないよね」 クスッと笑いを漏らしながらつぶやくと、彼はさらにその上に手を重ねてきた。 大きくてあたたかなてのひらの重み。 これもきっと、大好きの代わりの重み。 「なにが」 「そういうとこ。恥ずかしげもなくさ」 途端にカッと頬が熱くなり、慌てて両手を引っ込める。 「冗談だってば」 モロが楽しげに笑いを堪えているその向こうには、『奏でる愛しい君へ』の背中。 美しく神々しいのに温かなその線が、彼の本来の姿を照らし出してくれている。 なぜだかそう思った。 「モロ」
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