再会する昨日と、嘘。

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「それはそうと、もう先生はよしてよ」 沈黙になるかと思いきや、あまり間も開けずにまた彼が口を開く。 あたしの負の感情を察知したのだろうか。 先生のレーダーは天気予報よりも正確だ。 きっと根っからの正義の味方。 「でも先生は先生だし」 「もう同じ大学生じゃん。ふたつしか違わないし」 「三つでしょ。浪人したの知ってるし」 「そこは忘れとかないと、栄美ちゃん」 「第一、先生以外なんて呼ぶの?」 出会った頃から先生。 悲しいことに、それ以上にもそれ以下にもならなかった先生。 ほかに呼び方なんて知らない。 「名前でいいよ。幸成(ゆきなり)くんとかで」 「ないない」 「河本(かわもと)ちゃんとか?」 「ムリ」
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