再会する昨日と、嘘。

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「相変わらず冷たいなあ、栄美ちゃんは」 「だって先生は先生だから」 先生を名前でなんてとても呼べない。 そんな恥ずかしいことできるわけがない。 「まあいいけど。それはそれで嬉しい気もするし」 「え?」 「まだ栄美ちゃんのなかで俺は先生なわけでしょ。だったらやっぱ嬉しいからさ」 そんな無邪気な笑顔を見せないでほしい。 胸の奥がミシミシいうのがわかる。 これ以上殻を叩かれたら、きっとひび割れてしまう。 ひび割れて、パリンと弾けて、閉じ込めたはずのビー玉が転がり落ちる。 一度転がり出したら、簡単には止まらないに決まっている。 無理に押し込めた反動が、力を貸してしまうから。 「ここ? 結構客入ってんね」
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