再会する昨日と、嘘。

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目的の画材屋の前で立ち止まった先生が、芝居がかった仕草で「わお」とつぶやく。 「今日からセールだから」 「がってん」 先生がポン、と手を叩くのと、あたしが誰かにぶつかるのがほぼ同時だった。 「栄美ちゃん……!」 突然のことに声も出ないまま弾き飛ばされたあたしを、先生がナイスタイミングでキャッチする。 「すみません! 急いでて……」 先生の腕のなかに収まったあたしに、慌てて謝る男の声……が、スッと途切れた。 僅かな間。 「チビ過ぎて見えなかったし」 ギクッとして顔を上げた。 ぶつかっておきながらチビ呼ばわりした男と目が合う。 瞬間、バチバチと激しく火花が散ったような気がした。 「……チビで悪かったわね」
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