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似過ぎている。
あの背格好。
髪型こそ違えど、あの頃毎週近くで見続けていた横顔は、忘れようとしても簡単には忘れられない。
いつもいつも無関心なフリをして、本当は爆発しそうなドキドキを抱えていた。
見間違えるはずがない。
釘付けになった視線の先で、彼は低姿勢のまま特設カウンターから立ち去ろうとしている。
背後の店員が、営業スマイル以上の笑顔で「ありがとうございました!」と声を掛けると、それにまた振り返って軽く頭を下げた。
ジリジリと近づいて来ているのがわかっていても、視線を外せない。
バカじゃないの、あたし。
どの面下げて会えるっていうの。
あたしなんて、めちゃくちゃでひどい教え子だったのに。
頭の中が一気に乱されていく。
乱気流に揉まれる飛行機みたい。
早く離れなきゃ。
見つかる前に。
なんとか逃げようと足を持ち上げた次の瞬間、無情にもガッチリと目が合ってしまった。
「あれ。栄美(えみ)ちゃん……?」
ゴクリ、と喉が鳴る。
「……先生」
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