再会する昨日と、嘘。

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「俺はそれ買いに」 言いながら、あたしの脇に聳える棚を指差した。 「先生、ポストカードなんか好きなの?」 「最近ね。部屋に飾ったりしてんの」 些細な返答に、いちいち反応してしまう。 趣味が変わったり、新しいことに興味を持ったり、それは絶対に誰かの影響に違いない。 恋人、やっぱりいるのかな。 彼女が、絵に興味のあるひとなのかな。 訊きたいけれど、そう簡単には訊けない。 答えが怖いということは、まだ彼を諦めきれていないということなのだろうか。 もう、二年も前のことなのに。 「この絵が好きなんだよね、俺」 たくさんあるカードのなかから一枚を抜き取って、あたしに見せてくる。 また、小さな発見にドクンと心臓が跳ねた。 「あたしも好きだよ、その絵。っていうか、描いてるひとが好き」
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