再会する昨日と、嘘。

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「マジで? いいよなあ、これ」 「うん」 細い目をさらに細めて、先生はずっと笑っているような気がする。 再会したのがあたしだから特別嬉しい、なんてわけはないだろうけれど。 最後のほうは、あたしの気を揺さぶろうとする真剣なまなざししか記憶にない。 本来はこんなに無邪気に笑うひとだったのに。 あたしはどれだけ彼を傷つけていたのだろう。 自己嫌悪のループに陥りそうになったので、あたしは細く長く息を吐いてそれを蹴散らした。 過去に首を絞められるなんてまっぴらだ。 後悔なら、この二年間飽きるほどした。 いまさら蒸し返すなんてバカもいいとこ。 メリットなし。 「もしかして、ポストカード一枚で一等当てたの?」 「そうそう。すごいっしょ」 「すごい。信じられない」 「日頃の行いがいいからなあ」 「嘘ばっかり」
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