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「全然駄目だ、うまく言葉にできない」
諦めたような情けない顔をする隆志を見て、雛はクスリと微笑を浮かべた。
「隆志は優しいですね」
「いやいや、俺はそんなキャラじゃない」
寝ながら顔の前で手を振る。
かなり真顔だった。
本気で自分は優しくないとかんがえているらしい。
しかし、それでも雛は自分の考えを通す。
「優しいですよ。
自分を襲った相手にそんな気遣いができるんですから」
隆志は襲われたどころか殺されかけたことを、雛はまだ知らない。
「………でも」
雛の表情から笑みは消え失せ、代わりに冷徹なまでの真剣な眼差しを隆志に向けた。
「今度から敵の前でそんな風に考えて躊躇しないでください。
じゃないと、殺されますよ」
雛のその言葉に隆志は動揺することはなかったが、少しの間を空けてから頷いた。
「あぁ………解ってる」
寝っ転がりながら夜空を見上げる隆志
その目線の先は星ではない別の何かに向かっていた。
「結局俺は今も昔も、奪う立場であって、救う立場じゃないんだ」
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