134人が本棚に入れています
本棚に追加
無表情で無愛想で無感動。そして消極的で面倒くさがり。
それが吉田 音(ヨシダオン)の性格だ。
そんなオンが自らオーディションに応募するわけがない。断じて無い。
オンは中学に上がる頃からギターを弾き始めたが、それは小学生時代からの親友の影響である。
親友はオンとは正反対といっても良いくらいに性格が違う人物で、その親友の歌声に惚れ込んだオンが何かで親友に関わりたくて選んだのが、ギターだった。
親友の歌声と、自分のギター。
親友の作った歌を一緒に奏で、親友が歌い、自分がギターを弾く。
その為にオンはギターを弾いていたのだが………
親友が勝手にオーディションに送ってしまったのだ。
オンは納得出来なかった。
オンは『親友がボーカルをつとめるバンドでデビュー』したかったのだ。
誰が受かるか分からないオーディションなんか、嫌だったのだ。
けれど親友は言った。
『これはチャンスだよ、オン。二人で受かれば一番良いけれど、片方だけしか受からなくても、いずれまた一緒にバンドを組めば良いでしょ。足掛かりになるから』
それは、親友らしくもない、弱気で少し卑怯な言葉だった。
片方しか受からなかったら、いずれメンバーを裏切ってバンドを組もう、と言う意味なのだから。
しかし私は深く考え無かった。むしろ、そこまでしてデビューしたいんだと理解した。だからこそ、受けにいったのだ。
最初のコメントを投稿しよう!