絵描き

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 絵描きは筆に色をのせ、器用に描いていく。人々に認められることは少ないが、絵描きの個性が如何なく発揮されていて、きらきら光ってるようにも見える。  絵描きは一段落した所で筆を置いた。洗面台に行き筆とパレットに付いた絵具を丁寧に洗い流し、石鹸で手を洗うと屋根裏に上がった。  屋根裏部屋は住居になっていてキッチンとベットと小さなテーブルがあるだけだ。屋根から突き出すような出窓があって、ここにも小さな写真立てが置かれている。  絵描きはばたっとベットに寝転ぶと、上着とズボンだけ脱いで布団に潜り込んだ。  胃袋がぐぅっと音を上げた。  聞かない振りをして目を瞑る。胃袋に収める物が無いのだから仕方がない。  次の日に絵描きが目を覚ましたのは正午過ぎだった。前の日にきた服をそのまま着て、両脇に大小の絵を抱えてアトリエを飛び出した。  アトリエから程近い公園通りで油絵を売ることが日課になっている。何度も往復した石畳の道を駆けていく。  公園通りに着くと売店やフリーマーケットが軒を並べていた。公園通りは観光客や何やらで往来する人が多い。週末にもなればちょっとした市場のように賑わう程だ。  
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