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絵画展の主催者の殆どが貴族なのだ。
つまり、アートの何たるかも知らない貴族のボンボンが描いた駄作ですら、親親戚が主催者なだけで簡単に受賞できるのだ。そう云う社会なのだから仕方が無い.
そんな画家の所に今日は珍しい客が来た。空に闇が差し始めて帰る準備をしている所だった。
体に所々傷があって汚れているが、黒い髪が艶やかで綺麗だ。白い髭が風に触れて揺れている。尻から伸びた尻尾は途中で折れ曲がり、四本足でその小さな体を支えている。
黒い毛並みをした猫だ。
その猫は一枚の絵の前で座っている。親から受け継いだ鍵尻尾を可愛く揺らして、熱心に絵を見ている。その絵は白い猫が描かれた小さな絵だった。
「気に入ってくれたかい?」
絵描きは帰り支度をしたまま黒い猫に話しかける。粗方片付けると、絵描きは猫の横にそっとしゃがんだ。
「君にあげてもいいんだけど、持って帰れないよね・・・」
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