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黒い猫は不吉だ。
昔から人間はそうやって漠然とした何かから自分を守るために、不吉とされる物を自ら作り迫害を加えてきた。
不吉だと罵られる方からしたら迷惑な話だ。ベルギーでは昔、「猫の水曜日」なんてものがあって時計台から黒猫を投げ殺す行事があったそうだ。
お爺さんもその又お爺さんも、ずっと昔の御先祖様だって魔女に使えた事は一度もないのに、身勝手な人間のせいで純真無垢な黒猫たちが犠牲になっている。この世界に必要の無いものが有るとしたら、それは人間だ。
それが、黒い毛並みをした猫の口癖だった。
妬みでも嫌みでもない。心から出る本音だった。何故ならこの猫も人間にそういう振る舞いを受けているからだ。
罵声を浴びたり石を投げられたりした事は一度や二度じゃない。えらく傲慢な貴族の男に蹴られそうになったことも有る。
だから猫は人間に近づく事は無い。
猫は一人ぼっちだった。
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