49人が本棚に入れています
本棚に追加
一雨ごとに寒さを感じさせる季節に、冷たい風が吹く。
そんな風を感じながら、庭の椅子に腰掛ける一人の老婆の耳には、風と共にかわいらしい声が届いた。
「―ちゃぁん―― おばぁちゃぁん」
その声が耳に入った老婆は、自然と優しい笑みを浮かべる。
そして、歳相応の話し方ではあるが“いまだ”綺麗な透き通る声で自身の居所を告げた。
「あ、居た! おばあちゃん、この前のお話しの続きぃ」
「はいはい。外は寒いからお家に入りましょうか」
老婆はそう言うと、孫であろう女の子と共に家に入り、暖炉の前までゆっくりと移動した。
ここはグランザール。
かつて、グランザール王都があった場所から程近い木造の一軒家。
手入れが施された庭。門からのストロークは煉瓦作り。主のセンスを感じさせる。
そして、よく日差しが入りこむ暖炉の前には、老婆と女の子が椅子に座る姿があった。
最初のコメントを投稿しよう!