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「ねぇねぇ早く早くぅ。お姫様と王子様はどうなったのぅ? もう手繋いだりしたの?」
女の子の可愛い質問に老婆は、一度クスリと微笑むと話しだした。
「さぁ……どうでしょう?
でもね、悲しい事に二人は最初仲が悪かったの」
「えぇーー……」
仲が悪かったと知った途端に、落胆する女の子を見て老婆は少し不安になった。
これからもっと残酷な話しをしなければいけないのだ。
ーーそう、老婆が物語として聞かせているのはジングに起こった凄惨な過去。
ジングの民が語り継がなければならない実話なのだ。
しかし、いくら残酷といえど、これだけは次の世代に語り継いでもらわなければ困る。
ーー私の一族には、私自身が話さなくては……
老婆はそう思うと、孫にも分かりやすく丁寧に物語を紡ぎだした。自身が知る凄惨な過去をなるべく優しく――
その老婆の真剣な表情に女の子もまた自然と真剣に聞く体制をとった。
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