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遠くから聞こえるひばりの声が、清々しい朝を彩る。
「綺麗‥」
一面に咲いた見事なばかりのその赤を見つめ、思わず口を開いた。
「お部屋に飾りましょうか?」
「ううん、いいの。私はこうやって見ていた方が好きだし、それに‥バラも喜ぶわ」
「それがいいですね、リオン様は本当にお優しい方ですわ」
侍女の名はロイ。
高貴な侍女だけがつけることを許される、深い青色をした髪飾りは、腰の丈ほどもある漆黒の黒髪を束ねている。
――時間も忘れ庭の景色やバラをみて楽しんでいる若い姫はとてもいきいきとして見える。
侍女は声をかけるのを、一瞬渋ったがそっとそばにより小さな声で問いかけた。
「リオン様?ろそろお部屋に‥」
2人の間をすり抜けていく風邪にリオンは華奢な体を身震いさせた。
「そうね‥明日も見に来ていい?」
「勿論でございます、さぁ戻りましょう」
ロイはそっとリオンの肩に上質なシルクの布をかけた。
ありがとうの代わりに姫から向けられた顔は、昔と変わらない、姫の満面の笑みだった。
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