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「焦った……」
俺はそれしか呟けなかった。
一瞬だけ、本当に一瞬だけだけど、翼の顔が本気だったから。
「んな焦んなって、蒼。翼も涙を拭けよ」
翔は笑ながら自分のハンカチを翼に差し出す。
翼は、ありがとうと言ってそれを受け取った。
「しっかし、カッコイイ銃だなぁ~ちょっとオレに貸して」
翔は翼の銃に手をかけた。
「あ、」
翼が止めようとしたけど一歩遅く、翔が銃を持ち上げ……ようとして落とした。
「なんだこりゃ、めちゃくちゃ重いぞ!?」
「えっと……武器は自分の一部分みたいなもので、他の人が持つと拒絶反応を起こして重たくなっちゃうんだ、ごめんね」
申し訳なさそうに翔に話す翼は落ちた自分の銃をひょいと持ち上げで、すっと消した。
「すっげー……」
俺は部屋で武器の手入れをしている姿を見ているから慣れてるけど、初めてみるその光景に翔は驚きを隠せないようだ。
「本当に脅かしてごめんね」
「いんや、気にしてないし」
謝る翼に対して翔は笑ながら返事をする。
本当に肝が据わってるダチだ。
後ろから「すいません、御注文はお決まりですか?」という店員の声が聞こえて俺達は慌てて昼飯を選ぶ事になった。
「あー今日は楽しかった」
日が落ちる前の学園の正門前。
一通り遊んだ後俺達はここに戻ってきた。
翔とは寮の場所が違うからここでお別れだ。
「僕も、楽しかったよ。ありがとう翔くん」
「くん付けはいいって。オレ達ダチなんだからさ」
「友達……」
「良かったな翼」
「うん……うん!本当にありがとう、蒼、翔」
「んじゃオレはここで。またなー」
翔は手を降って自分の寮へ帰って行った。
「今日は行って良かった……」
「俺も翔と翼が仲良くなってくれて良かったよ」
「ありがとう、蒼」
翼は今まで見た事のない笑顔で俺に微笑んだ。
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