始まり

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「さ、帰ろうぜ」 俺達は歩き出す。 すると前から見知った顔の人物が歩いて来る。 その手には本屋のロゴが入ってる袋をもっていた。 「あれ、綾塚じゃん」 「……文さん」 横にいる翼が綾塚の名前を呼んで俺は驚く。 何で翼が綾塚の名前を知ってるんだ? 「……」 綾塚は俺達に気がついたらしく、目の前まで来て止まった。 その表情はいつもの無表情。 「よ!綾塚。買い物か?」 「……そうよ」 俺が言うと、綾塚はいつもの様に淡々と呟く。 そして俺の横にいる翼をじっと見つめた。 ……そう言えば、翼も綾塚の名前を呼んでたな。 気になったので、聞いて見る事にした。 「2人は知り合いなのか?」 俺が2人に聞くと、綾塚が首を縦に振った。 「えっとね、文さんは前に僕の学生証を拾ってくれた事があって、その時に知り合ったんだ。……ね?文さん」 「……えぇ」 綾塚は表情を変えずに肯定する。 2人にそんな出会いがあったなんてな。 「……2人は外出?」 「あぁ。ついでに翔もいたぜ」 「そう」 そう言えば、翔が前に綾塚に告白した事があって、あっさり切り捨てたんだっけな。 ここは一つ、彼の株を上げておくか。今更な気もするけど。 「翔、良い奴だぜ?翼の事、友達って言ってくれてさ」 そう言うと、綾塚はじっと翼を見る。 翼は見られている事に少し困った顔をしていた。 「良かったわね」 それだけ言って綾塚は俺達から離れて歩いて行ってしまった。 「あー……綾塚っていつもあんなだから」 「そうなんだ」 俺が付け足す様に言うと、翼は苦笑した。 「さーって帰ろうぜ?」 「うん、わかった」 俺達は寮へと戻って行った。
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