始まり

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「なんだかなぁ……」 次の日、教室の自分の席で俺は小さく呟いた。 翼は俺が寝てる間に帰って来たらしく、朝いつもの様に俺の目覚ましを止めて起こしてくれた。 その顔はいつも通りの顔だった。 「どうしたの?そんなに憂いおびた顔をして」 俺の目の前に人影が現れた。 俺は顔を見上げる 「綾塚……」 綾塚 文(あやつか ふみ)。 ウチの女子クラス委員長だ。 「今日提出する書類、貴方だけ出してないのだけど?」 「あぁ、ごめん。……はい」 「ありがとう」 綾塚は俺からプリントを受け取るとすぐに教室から出て行った。 「綾塚ってさー女子の中で可愛いんだけど、何処か近付くなオーラ出してるよなー」 俺の所にクラスメイトの佐藤 翔(さとう かける)がやって来る。翔はクラスの中でよくつるむ仲の良いダチだ。 「まぁなー」 「オレさー綾塚可愛いから告った事あるんだけどさ~」 「マジかよ!?」 「大マジ~。だけど、興味無いからの一刀両断」 「ご愁傷様です」 俺が手を合わせて翔に向けると、翔は「このやろー」と言いながら俺を軽く蹴飛ばす。 「そう言えばさ、今度遊びに行くんだけど、蒼、翼呼べよ」 「翼を?」 「お前の話を聞く分じゃ、翼ってやつは天闘でも怖くなさそうだし」 翔は微笑みながら言う。 このクラス、いや普通科の人間の殆どは天闘と関わろうとはしない。 俺は翔に翼の事をよく話すから興味が湧いたんだろう。 「分かった。翼に言っておく」 「あっりがとなー!」 俺の肩を軽く叩いて翔は、ちょうどチャイムが鳴ったので席に戻って行った。 これはいいチャンスなのかもしれない。 翼は天闘だけど怖くないって翔に証明できる。 俺はウキウキしながら放課後を待つ事にした。
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