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ためらいと混乱に瞳を泳がせるサラの手を取り、レオンは城へと誘う。
その力強さを煽るように、レオンの言葉と眼差しは拒否を許さない。
だが、サラは身じろぎをして逃げようともがく。
ここを離れるわけにはいかない、と繰り返しながら。
「姫様」
「違う、私は、姫なんかじゃない」
「あなたはルカ様の……」
「知らない」
かぶりを振るサラの瞳には、怯えと――それを勝る強い光が宿った。
「私はリサを、見つけなくちゃいけないんです」
すみません、と口早に告げレオンの手を振り払い逃げるように背を向けたサラの肩をブラックは数回叩いて称賛した。
よくぞ断ったと笑うブラックはわざわざ振り返り、んべっと舌をつきだしている。
瓦礫の山へと向かうふたりの背を茫然と見つめ、テッドはたれた目を見開いた。
「えっ置いてかれた」
立ち竦む彼をレオンとケイが挟み込み、顔を覗き込んでいる。
「リサとは、誰だ」
「えっ」
「今、姫が言ってたでしょう。誰ですか」
「お……俺たちの親友です、けど……まだ見つかってなくて」
素早いまばたきを繰り返し、喉を詰まらせながらの説明にふたりは顔を見合わせ頷いた。
「その娘が見つかれば考えも変わるやもしれん」
「そうだね。ちゃっちゃと見つけよう」
そのまま、彼らは硬直したテッドの肩を叩き瓦礫の山へと向かう。
絞り出された「何なの……痛いし」という呟きには、振り返りもせず。
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