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「ん…」
穏やかな声音で名前を呼ばれ、サラは身じろぎをした。
いつもそうして起こされてきた。
大好きな親友――リサに。
「サラ? 起きた?」
「リサ!」
縋るように声の主へと手を伸ばし、勢いよく起き上がる。
「……俺だよ。リサはまだ、見つかってないんだ」
「テッド……」
ごめん、と続け眉尻を下げたテッドは人差し指を唇にあてて視線をずらした。
その先にはソファに腰かけたまま眠りにつくブラックの姿があった。
「さっきやっと眠ったんだ。眉間の皺、ひどいよね」
「……そ、だね」
テッドのおどけた口調にサラを落胆させまいとする彼なりの気遣いが見え隠れする。
悲しいのは、寂しいのは、自分だけではない。
「――サラ!!」
小さく息を零した瞬間激しい音とともに扉が開き、がなるような叫びが部屋中に響く。
構える暇もなく、猪のような勢いで飛び込んできた男はその腕でサラを強く抱きしめた。
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