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いつもそうだ。
どれだけブラックに腹を立てても、こんな表情を目にすると胸が軋み、どうしようもなくなる。
いつも勝気な彼のしょんぼりした姿は、言い過ぎたと反省しているのかどうなのか。
思わず、溜息が漏れた。
「ブラック……リサは?」
子どもの頃から何度も繰り返してきたこのやり取りの間に入って空気を変えてくれたのは、親友のリサだ。
この期に及んで彼女を頼る自身の情けなさに頭痛がしてくる。
だが、この場の空気を変えてくれるのはリサしかいないし、何よりいつも一緒にいた彼女の姿がないのは気がかりで。
サラの不安を感じ取ったのか、ブラックは静かにかぶりを振った。
「まだ、見つかってない」
無情な言葉に、全身の力が抜ける。
ふらふらとふらつく細い肩を掴み、ブラックは真正面からサラを見据える。
きっと見つかるから大丈夫だと、いつになく優しい声音で囁き、ぐっと顔を近付けて続ける。
「オレも、不安だし、心配だ。けど、リサは絶対無事だから。しっかりしろ」
真っ黒な瞳が空色のそれを捕らえ、決して離そうとはしない。
わずかに揺らぐその瞳にブラックの不安を感じ取ったサラは肩を掴む彼の手を握り、小さく頷いた。
大丈夫。リサは、強いもんね――と囁いて。
「ねーえ、ブラックくぅん。俺の心配もしてくれていいと思うんだけどお?」
身体だけでなく、心まで近くなったふたりの距離を割って入った呑気な声に勢いよく振り返り目を見開く。
「テッド……!」
「無事だったのか」
「とうぜーん」
細かな傷はいくつもあるようだが、ひょろりと高い背の彼はしっかりとした足取りでふたりに近付いてくる。
何があってもたれ目がちな瞳をさげて笑うテッドの穏やかな表情が、サラは昔から大好きだった。
変わらないテッドの笑顔で、ようやく希望の光が見えてきた。
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