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「何があったの?」
テッドの手当てをしながら、サラはポツリと尋ねた。
言葉を受け取ったテッドは眉尻を下げて小さな溜息をひとつ落とす。
「どこから、話したらいいかな」
「私が教室を出てから、何があったのか」
「ああ、あれ! いくらサラを逃がすためだったとはひどい言いぐさだったよねえ」
ふいに放たれたテッドの言葉に、手が止まる。
彼もまた、いらぬことを口にした自覚はあるのか「あ」と零しそっぽを向いている。
「どういう意味」
目を泳がせるテッドに詰め寄り、半端なまま止まってしまっている治療の手にぎゅっと力をこめる。
じくりとした痛みと大きな目で半ば睨むように見つめられ、テッドはすぐさま音を上げた。
降参! と両手を上げてブラックを見ればふたりのやり取りには気付いていないようで先ほどと変わらず救助活動に精を出している。
「あー……のね、あいつ、気付いてたみたいで」
「何に?」
「学園に、危険が迫ってるって」
サラとテッドの近くに人はいない。
なのに彼はトーンを落とし、一層聞き取りづらい小さな声音で続ける。
「出入り口は全て塞がれ、逃げ場はない。だったら、内側から助かるんだって」
「ど、どういうこと?」
たがが外れたようにテッドは当時のことを話していくが、予想外の言葉にうまく情報処理ができずサラの頭は混乱した。
けれどひとつだけ確かなのは、あまりに真剣な表情で続けるテッドの話は真実なのだということ。
「そのままの意味だよ。先生たちが、出入り口を塞いでたんだ」
「え――」
「ブラックの言う危険が何なのかはわからなかったけど、険しい顔した先生が総出で並んでるのは異様だったよ」
「でも、皆を守ろうとしていたのかもしれないし、」
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