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「あの時、私をけしかけたのは――」
「ブラック自身、作戦の成功率に不安はあったみたいでさ。だったら確実に逃げ切られるうちにと思ったんじゃないかな」
「……」
「いくらサラを逃がしたいからって、あれはないよねー……って、サラ?」
けらけらと笑っていたテッドは、サラの手がわずかに震えていることに気付き動きを止めた。
俯いてしまったサラの表情はわからず、もう一度名前を呼んでみても返事はない。
「あの、サラ?」
「つまり、ブラックにとって私は足手まといだったのね」
「へっ!?」
サラがひとり、学園を抜け出したのはブラックの冷たい言葉がきっかけだった。
『人に頼らねーと何もできないくせに』
見たこともない険しい表情で放たれた言葉はサラの心を傷つけ、奮いだたせるには充分だった。
いつもと変わらない平和な日常を凍りつかせたブラックは、サラの反論を遮り冷たい視線のまま続けた。
『ひとりでドラグ―ドラゴンの鱗を取ってきたら認めてやる』と。
誰の仲裁も、制止も聞き入れずブラックはただその言葉を繰り返し、他は認めないと言い張った。
だからサラは、涙を飲み込みドラグ―ドラゴンの元へと向かった。
他の誰でもない、ブラックに認めて欲しかったから。
誰の手も借りず、ひとりきりでもできることはあるのだとわかって欲しかったから。
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