ひとり旅

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『叶うモノ,叶わぬモノ』 芸術性溢れるこの街で 僕は“あの偉い男性”からの依頼により 画家が所持している時計を 回収することになった 何か特別な事情があるのだろうが 時計を回収したら “あの偉い男性”に渡す それまでが僕の与えられた仕事であり それ以上首を突っ込むのは 死に値する 「すいません こちらに……」 「何だこれは!!」 誰かが怒鳴る声が聞こえた 声のした方に行ってみることにした 「アナタが――さんから時計を預かったという 画家の方ですか?」 「ん? おぉ! 待っていたぞ これじゃ!」 「……あの人の好みってよくわからないな」 重い上に掌よりも大きい時計 実用的ではなさそうなので やはり特別な事情のあるものなのだろう 「……ところで先程は 何を騒いでたんですか?」 「あぁ この絵を見てくれ」 画家は一枚の絵を僕に見せてくれた 描いてある生き物は どこかの世界で聞いた 白虎というものであったはずだ 「綺麗な絵ですね アナタが描いたんですか?」 「違う! 儂のバカ弟子のものだ」 そして絵を破る 近くで唇を噛みしめていた男性が 恐らく弟子だろう 師匠にとっては 自分より優れてる弟子は 許せないんだろうな The scholar may surpass his master [青は藍より出でて、藍より青し]
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