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窓から射す紫外線が青年の皮膚を焼く。
異臭を放つ青年の左手が男の胸を穿ち、心臓を鷲掴みにした。
男は口を金魚のようにパクつかせた。男の唇からは血の塊が後から後から零れ落ちていった。
青年は更に腕を押し込み、ゆっくりとした動きでそれを引き抜いた。
男は大きな音を立てて倒れ込む。
そこから広がる赤を見て、青年は笑った。笑いながら泣いていた。
女は言葉を失った。
青年の皮膚からは煙が昇っていた。焼け爛れた皮膚がズルリと落ちる。しかし、青年は笑いながら女を見つめるだけだった。青年の痛覚は機能していなかったのだ。
「ごめんなさい」
女の呟きに青年は笑うのを止める。
「何故、謝る」
女の肩は震え、長い金の髪は揺れていた。
青年は女の肩を抱く。
「ごめんなさい」
女は子どものように泣いて謝った。
青年は大丈夫だと笑う。
「貴方に人を殺させてしまった。ごめんなさい」
女の声は小さくか細い。
青年はどうすることも出来ず、煙を上げる手で優しく女の髪をすいた。
鈍い音を知覚した時には既に硝煙の香りがしていた。
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