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うつらうつらと、過去のことを、豊総耳神子(とよさとみみのみこ)は思い返していた。
道教に従い、生きていた彼女は、いつしか仙人に、聖人にとなっていた。
それだけ長い時を生き、死に、そして蘇ったのがつい最近。
崇拝され、それほどに立派で、しっかりとした彼女にも、過去に囚われることがあった。
「どうして……忘れられないんだろうね」
暗闇に落ちたその部屋に、誰の姿もなかった。その独り言は、誰に聞かせるつもりもないのだから。
「はぁ……」
神子は、何度目になるかわからない、深いため息をつくと、机にふせた。
まるで、恋に悩める女の子のようだ。
いや、実際にそうなのかもしれないから失礼な言い回しだ。
歳だけは無駄にくっても、その体はやはり女の子なのだから……。
「……んっ?」
神子は突っ伏していた体を起こすと、異変に気がついた。
大気が震えるような。
空間がねじ曲がるような、そんな感覚に陥っているようだった。
(これは、空間と空間が繋がって?)
彼女にしかわからない考えを、神子は頭ので巡らせ、その異変の真相を待った。
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