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「夏夜、と言うのは?」
「あ? 俺のダチの名前だよ。城でいた時の唯一の友達だったんだ」
「なるほど。そうか、友達……か」
神子は感慨深そうな瞳で、宝希を見据えた。
先ほどから、彼は、その話をする時だけ、どこかいきいきしているようだった。
「お前にも一人くらいはいるだろ?」
「……忘れてしまったよ、友達などと言う言葉は」
「なんだよ……、寂しいやつだな……」
一重に言えたわけじゃない。
宝希は、彼女からどことなく孤独な雰囲気を感じたから。
「まあいいや。そんなことより腹が減った、飯!」
しかし、そんなことをかまえるほど、宝希は大人ではなかった。
つまりはわがままな自己チューなんだ。
「……ああ、わかった。少し待っていてくれ、すぐに用意するから」
「早く美味い飯を作れよ? 俺様の口に合うやつをな」
了解といった表情で、神子は台所に立つ。
彼女もかなり久しぶりに料理をする。長い眠りにつく前はよくやっていたはずだ。
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