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『それでは、本題ですが、あなた方の記憶は私の手によってしばらく忘れさせてもらいました。』
普通ならみんな怒りに飲み込まれていただろう。
だが、自分達の記憶を忘れさせられたというのに怒る者は一人もいなかった。
いや、内心みんなは今にも怒りを爆発してしまいそうだろう。
ゲームマスター・・・・
さっきここに来る時に案内人、サクヤから聞いた名前だ。
サクヤは僕の時と同じように「ゲームマスターが記憶を消した」ということを話していたに違いない。
そうでなくともみんな聞くだろう?
「記憶がないんだ」と
あの話から現在までの過程でこのGMが只者ではないことが明らかだ。
むやみに怒りをあらわにしたらGMの手によってもっと恐ろしいことになる可能性が高い・・・
GMは恐怖でみんなを簡単に縛り付けたのだ。
だがそれでも縛り付けられた"獲物"はあらがう
「記憶を消すって・・・どうやってだよ!?」
ロビーの内の一人が問い掛けた
『現代の薬を利用すれば、記憶を一時的に消すことは可能です。
脳の信号を意図的に遮断すれば良いだけですから』
それだけ聞くと問い掛けた人物は椅子に座って黙り込んだ。
『あなた方には人狼ゲームをし、記憶を取り戻していただきましょう』
記憶を戻すことも出来るのか・・・・
「勝った人は記憶を戻してくれる・・・とかか?」
思い切って今度は僕が質問してみた。
『いえ、記憶を取り戻す条件は今は伏せさせていただきます。
とにかくあなた方は人狼ゲームをし、自分が何者なのかも思考してみて下さい。』
そう言った後、スクリーンが閉じ、部屋が明るくなった。
「それではゲームの前に休憩時間を設けさせていただきますので、各個人の自己紹介等をお願いします。
お名前は全員覚えていることは確認済みですので」
サクヤがそう言って、脇の椅子に座った。
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