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話は二ヶ月前のこと。突然、黒い軍服に身を包んだ男たちが晃祐の家の扉を叩いた。
「何ですか」
と言いながらも、その時にはもう察しは付いていた。晃祐は睨むように男たちを見た。離れたところから、近所の子供たちが何があったものかと楽しそうにこちらを観察している。
「とりあえず、怪しまれっといけねェから、中に入れてくんねえかい?」
扉の向こうの、小柄な男は言った。
「・・・はぁ」
べらめえ口調で話すのは、並んだ男たちの中央に立っていた中年の、おそらくこの中では長であろう男だ。背はお世辞にも高いとはいえないが、顔立ちは精悍で、瞳の奥で煌めくものがあった。
この人物だけは軍服ではなく、縞の袴姿だった。見たところ、警視の関係者か政府の役人といったところだろうか。
「あんた、古屋晃祐さんだろ?ちょっとハナシがあるんで来たんだけどさ」
応接間のような部屋へ案内している間も、男はべらべらとしゃべっていた。
「この家結構広いな。奥方は居るのかい?」
「いいえ」
「冗談だよ」
「・・・」
「厠はどこだ?」
「あっちですけど?」
「いや、ここ広いから、迷ってたら間にあわねえだろ。あっはは」
部屋に着くと、自分の家に帰ったように、小柄な男は椅子に座った。
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