4人が本棚に入れています
本棚に追加
──何でこんな所にいるんだ、俺は。
暗闇の中、右腕に絡む熱にハァ、とため息をつく。
「ため息ついてちゃ幸せ逃げるよ?彼方(カナタ)」
弧を描く唇にわざとらしく塗られた朱。
ため息ついてるのはお前のせいだ、と言いたい気持ちをぐっと堪えて、はっと笑う。
名前さえ覚い出せない女に見知らぬ場所に連れて来られて、誰がため息をつかずにいられるんだ。
暗闇の中響く重低音に、甲高い悲鳴のような声。
頭がガンガンする。
最初のコメントを投稿しよう!