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「ロッド、ところでパレードって?」
「そんなことも知らないのか」
心外だ、といわんばかりの表情を向けてくる連れに、自らも同じ表情をしてみせる。
「だって俺、去年はこの時期まだこの国に来てない。知るわけない、」
「あぁそうか。すまん、忘れてた。
パレードはな、王家の舞姫が収穫を祝い、煌びやかな衣装で踊るんだ。収穫祭を見に来る奴は大抵これが目当てだな。なんせ普段一般市民が見れるものではないし――何より、今の舞姫は次期王位継承者とも言われているからな」
「へぇ……あ」
「なんだ?」
途中で言葉をとぎらせ、黙り込んだレインをロッドは振り返る。
すると彼はその整った唇に指を添えて黙るように促す。
それだけでロッドは何かを理解したのか、レインが言葉を発するのを待つ。
喧騒の中、微かな太鼓の音をレインの耳は捉えていた。
常人には聞こえないほど小さく、ほんの微かな音色。
「ロッド、もう遅いかも。結構近くまで来てる」
「うーむ……これじゃ城に行くのは面倒だな。よし、休憩がてらレナの所に行こう」
自分も酒飲みたくなったんだろ、というレインの呟きは聞こえないふりをして、ロッドは意気揚々と馴染みの酒場へと足を進めた。
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