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「あらレイン、今日は城へ行くんじゃなかったの?」
馴染みの酒場に入るなり、あまり派手ではなくとも、艶やかな雰囲気を纏った女が出迎える。
艶のある黒髪に、煌めく琥珀の瞳。
女の色香を漂わせる、整った身体の持ち主。
彼女はロッドが今お気に入りの酒場の店員。酒場で働かせるのはもったいない!が彼の常套句。
レインはそんな彼女の持っていた盆からグラスを2つ取ると、微かな笑みを浮かべてロッドを指差す。
「おっさんが祭りの空気に負けて酒が飲みたくなったんだと」
「ようレナ、相変わらず綺麗だなー、いつもの頼むな」
にへらと緩んだ表情でレナに手を振ると、彼女は呆れたように眉根を寄せる。
「まったく……国王に会いに行くのにお酒を飲むだなんて信じられない」
「いいんだよ。俺とアイツの仲だからな」
不精髭の生えた口元をニッと上げ、レインの手からグラスを奪い、一気に飲み干す。
「あー、喉がカラカラだ。こんなむさ苦しい人込みの中歩けるかってんだ。
水じゃ物足りねぇ。レナ、早く酒ー」
「はいはい、レインも同じの?」
「いや、俺はこれでいい」
グラスを軽く振ると、カランっと氷が揺れた。
それを見てレナは笑いながら了解、と答えて店の奥へと消えていく。
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