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「こんな時に水なんか飲みやがって。何だ、歴戦の傭兵さんでも緊張してんのか?」
「ロッド。茶化すな。俺の仕事はあくまで傭兵だ。国の重鎮と謁見なんか初めてなんだぞ。ましてや国王なんて……なぁ俺、おかしくないか?」
目深に被ったローブから少しだけ顔を見せた。
その瞳が、僅かだが不安げに揺れているのに気付き、軽く笑ってしまう。
「大丈夫だ。心配すんな。国王には前もって話してあるから今は祭りを―――お、舞姫が来たんじゃないか?」
気を利かせてくれてか、レナが窓際の席に案内してくれたおかげで外の様子がよくわかる。
先程よりもずっと人の波が増えた通りにぞっとし、ここにいる自分に安堵しながらレインはパレードの集団を見遣った。
煌びやかな衣装の少女達が、踊りながら大通りを行く。
「あれは神殿に仕える舞巫女だ。そして、奥の輿に乗ってんのが……」
「舞姫、だな」
豪奢な輿に乗った、一際目を引く少女。
ウェールズ国民特有の白い肌と、栗色の髪。ゆるく巻かれたそれは、民衆に手を振るたびにフワフワを揺れている。
そして、くっきりとした目鼻立ち。その瞳は気の強さを表しているかのようにキラキラと揺らめく水面色に輝いている。
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